映画『バリー・リンドン』で目に止まったある英語表現を調べていたら、芋づる式に複数の英語表現が勉強でたので、本日はそれを皆さんとシェアしたいと思います。
ピックアップしたのはレドモンドの盟友であるグローガン大尉が戦死した直後のナレーションです。
映画本編では始まって47分45秒くらいのところです。
It is well to dream of glorious war in a snug armchair at home. But it is a different thing to see it firsthand.
(家でのんびり肘掛け椅子に座って、栄光の戦争を夢見ているうちは気楽なものだ。しかし実際にそれを目の当たりにするのはわけが違う)
レドモンドの辛い気持ちを語った部分ですね。
戦死したグローガン大尉は軍隊で唯一のレドモンドの同郷人であっただけでなく、地元で騒ぎを起こしたときも、ただひとり最後まで味方してくれた人物でした。
後に出てくるシュヴァリエ・ド・バリバリもそうですが、この映画の前半、レドモンドは同郷の年上の人にいつもかわいがられていますよね。
若い頃に父を亡くしたレドモンドは、父親の代わりになるような存在を常に求めていたのかもしれません。
さてここで私が注目したのがこの英熟語。
firsthand の意味とは?
引用したナレーション文に firsthand という言葉が出てきますね。
firsthand = 実際に、じかに、直接に
first = 第一の、最初の
この firsthand は
○自分の目で実際に見る(目撃する)
○自分が実際に体験する(身をもって体験する)
○誰かとじかに接する
○直接、情報などを入手する(又聞きではない)
などの文脈に使われる言葉です。
引用した『バリー・リンドン』のナレーションでは see(見る)を修飾しているので「自分の目で実際に見る」の用例とも言えますが、実際には「自分が実際に体験する」の意味合いが強い感じがしますね。
first hand は形容詞と副詞の両方で使えますが、副詞として使用する場合は
at first hand = じかに、直接に
のように前置詞 at がつくこともあります。
この場合は first hand が名詞として使われていて、at を付けることで副詞化させているんですね。
LONGMAN辞書で見つけた用例を引用します。
Many people have seen the horrors of war at first hand.
(多くの人が、戦争の恐怖を実際に目の当たりにしている)
この用例など『バリー・リンドン』のナレーションとまったく同じ意味で使われていますね。
形容詞としての用法としては例えばこんな熟語があります。
firsthand experience = 自分が身をもって体験した経験
firsthand information = また聞きではなく、直接、入手した情報
他の映画から形容詞の用例をあげます。
映画『戦場にかける橋』より
Our chief problem is lack of firsthand knowledge.
(われわれの最大の弱点は、現地情報を持っていないことだ)
上は firsthand knowledge(直接の情報)という言葉で使われていますが、これは戦争映画の作戦会議のシーンで、作戦を決行する現地に実際に行ったことがある人間が味方に一人もいない、ということを言っているセリフです。
以上、firsthand の様々な用法を説明しました。
さて、firsthand という言葉があるのなら、secondhand という言葉もありそうですよね。
secondhand には、どんな意味があるのか?
secondhand の意味とは?
firsthand は「直接の」という意味でした。
secondhand は当然「間接の」という意味になります。
second = 第二の、次の
しかしことはそう単純ではありません。
secondhand は firsthand と違って、意味が3つもあるんですね。
second hand の意味
1、間接の、又聞きの、受け売りの
2、中古の
3、時計の秒針
3つ目だけは second の意味が違うので、ここで一緒に扱うのは気がひけるものがありますが、この際ですから一緒に覚えてしまいましょう。
それでは上記3つの意味を、ひとつひとつ他の映画から用例をあげて見ます。
「間接の」の用例
まずは「間接の」の用例。
映画『グッドフェローズ』より
Paulie hated phones. He wouldn’t have one in his house. He used to get all his calls second hand. Then you’d have to call the people back from outside phone.
(ポーリーは電話が嫌いだった。家にも電話を持とうとしなかった。彼はいつも他の誰かから間接的に電話を受けて知らせてもらい、外から掛け直していたんだ)
この secondhand の「間接の」の用例で、second hand smoke という熟語がありますね。
second hand smoke = 間接的な喫煙 = 副流煙を吸うこと
映画『ファーゴ』より
Can you crack a fucking window open, man? You know, it’s proven second-hand smoke is a carcino… You know, a cancer agent.
(おい、窓すこし開けてくれよ。なあ、副流煙は癌性の……ほら、癌の要因だって言われてるぜ)
そういえば『バリー・リンドン』でも、後のシーンでレドモンドがパイプを吸っていて、奥さんがゲホゲホいうシーンがありましたっけ。
副流煙の実例ですね。
「中古の」の用例
次は「中古の」の用例。
映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』より
KATHY : Look what she’s brought for you! It’s a bike!
SELMA : We cannot accept that.
KATHY : Selma, it was second-hand.キャシー「見て、彼女が持ってきたもの。自転車よ!」
セルマ「そんなもの受けとるわけにはいかないわ」
キャシー「セルマ、中古品よ」
「時計の秒針」の用例
次は時計の秒針。
これだけは second の意味が違います。
second = 秒
時計の針の呼び方
an hour hand = 時針(短針)
a minute hand = 分針(長針)
a second hand = 秒針
名詞なので冠詞が入ります。
これも他の映画から用例をあげておきます。
映画『十二人の怒れる男』より
Is there anybody who got a watch with a second hand?
(誰か秒針のついた時計を持ってる方はいますか?)
以上、second hand の3つの用法でした。
thirdhand の意味とは? – あとがきにかえて
本日は『バリー・リンドン』のナレーションをきっかけに、firsthand と secondhand という言葉を解説しました。
secondhand の方が意味が多いだけに、使われる頻度も firsthand より多いですね。
ちなみに firsthand と secondhand があるのなら、thirdhand という言葉はあるのか?
当然、持ち上がる疑問ですよね。
調べてみたところ、
thirdhand = 二重に間接的な方法で
という、当たり前の意味だけが辞書に載っていました。
例えば2人の人(業者)を介して購入した商品、いわゆる「中古の中古品」などを指す場合に使うとのことです。
そのほかの thirdhand の用例ではこんなのがありました。
Third-hand smoke = 三次喫煙
(タバコを消した後の残留物から有害物質を吸入すること)
タバコを吸い終わった人や、その近くにいた人の、洋服にくっついたタバコの臭いなどを指すんだそうです。
アメリカの某がん研究機関がつくった新語だそうです。
以上、数少ない thirdhand の用法をご紹介したところで、本日の記事はこのへんで。