使者を装ってイギリスの軍隊から見事脱走することに成功したレドモンド・バリー。
ところがイギリスと同盟国のプロセイン軍と遭遇し、ポツドルフ大尉のもてなしを受けることになります。
本日はキューブリックの映画『バリー・リンドン』のそんなシーンのナレーションから、英語のボキャブラリーをピックアップしてみました。
上に貼った動画は(中略)以降の部分です。
映画本編では61分41秒からのところ。
Barry was treated with great civility and was asked questions about England. He answered as best he could, inventing many stories. (中略)His host seemed satisfied with these stories. But, he led Barry on with a skillful combination of questions and flattery.
(バリーは大層なもてなしを受け、イギリスについて質問責めにあった。彼は多くのホラ話をでっち上げ、できる限りそれに答えた。[中略] もてなす方もそれらの話しに満足しているように見えたが、実は質問とお世辞を巧みに操りながら、バリーを誘導していたのである)
lead someone on
このナレーション文の中に最近よく耳にする熟語があったので、本日はそれを皆さんとシェアしたいと思います。
lead someone on = うまいことを言って〜をその気にさせる
この lead someone on という熟語、うまいことを言って人を誘導するとか、思わせぶりな態度をとって人の気を引くとか、巧みに人を操る、騙す、気を持たせる、みたいな状況で使われる言葉です。
この『バリー・リンドン』のシーンではつまり、ポツドルフ大尉は最初からレドモンドのことを怪しいと思っていたので、おだてて安心させながら、質問責めにして、ボロを出すのを待っていたんですね。
他の映画からも用例をひとつ。
同じキューブリック監督の映画です。
映画『時計じかけのオレンジ』より
I’m not so bad. I was led on by the treachery of others.
(僕はそんなに悪くありませんよ。他の仲間の裏切りにあって、まんまとのせられてしまったんです)
上のセリフは逮捕された不良少年アレックスが警察に言い訳をしているシーンですね。
さて、この lead someone on という熟語、日常会話で出てくるときは、だいたい恋愛用語で「モーションをかける」みたいな意味で使われることが多いんですね。
たまたま私が耳にしたのがそういうシチュエーションばかりだったのかもしれませんが、この表現、わりと恋愛用語っぽい印象があります。
意中の相手に気に入ってもらえるような、または相手に自分が好きだと気づいてもらえるような態度をとる、という意味でよく耳にします。
また、「好きでもないのに、好きだと思わせるような態度をとる」とか「付き合う気もないのに、思わせぶりな態度で誘惑する」みたいな意味でもよく使われています。
アメリカのテレビドラマから、この用例をひとつ引用します。
TVドラマ『Garfunkel and Oates』より
KATE : But, wait. Is it mean to like lead them on?
RIKI : No. It is their fault for not noticing we didn’t say a word all night.
KATE : Good point.ケート「でも待って。これって相手に気を持たせることにならない?」
リキ「ううん。わたしたちが一晩中ひと言もしゃべらないことに気がつかない彼らが悪いのよ」
ケート「なるほど」
上に引用したのは私の大好きなドラマですが、日本では未公開で恐らく誰も見たことないと思いますので説明しますと、このセリフはケートとリキという女の子が、「無口な女の子って魅力的に見えるのかしら?」という話しになって、ひとつ初めて出会う男子と、ひと言もしゃべらずにデートをしたらモテるのか実験してみよう、ということを言った後のセリフです。
もうひとつ、コント形式で英語のボキャブラリーを説明しているYouTubeチャンネルを見つけましたので、そこから lead someone on の回を引用します。
なかなかおもしろいです。
上の動画は基本的に恋愛で相手に気を持たせる意味の説明ですが、オチで広い意味での「うまいこと言って相手の気を引く」用例もカバーしているので、lead someone on の説明としてはかなり参考になりますね。
ちなみに上の英語チャンネル、なかなかおもしろくて勉強になるので、他の動画もオススメです。
その他のボキャブラリー
civility = 丁寧さ、礼儀正しさ、礼節
skillful = 熟練した、巧みな
flattery = おべっか、お世辞
あとがき
本日は18世紀のヨーロッパが舞台の映画『バリー・リンドン』のナレーションから、lead someone on という言葉をピックアップし、現代のカジュアルな使い方を解説してみました。
古い映画は英語の勉強にならないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、こうやってちゃんと調べていろんな用例を確認してみると、けっこう勉強になりますよね。