ディズニー映画『アナと雪の女王(Frozen)』の看板曲
『Let It Go(ありのままで)』の歌詞で英語の勉強をしてみます。
まずは英語の歌詞と私の和訳をごらんください。
Let It Go
ありのままでThe snow glows white on the mountain tonight
Not a footprint to be seen
A kingdom of isolation
and it looks like I’m the Queen今宵、雪は山肌に白く輝き
足跡ひとつない
孤独の王国
そしてさながらわたしはここの女王様といったところねThe wind is howling like this swirling storm inside
Couldn’t keep it in
Heaven knows I’ve triedこの身に渦巻く嵐のように、風は鳴る
おさえきれなかった
わたしはちゃんと努力したわDon’t let them in
don’t let them see
Be the good girl
you always have to be人を入れないようにね
人に見られないようにね
いい子でいるんだよ
どんな時でもConceal
don’t feel
don’t let them know
Well now they know隠すのよ
感情をおさえるの
バレないように
ふっ、とうとう知られちゃったLet it go
let it go
Can’t hold it back anymoreこれでいいわ
これでいい
もう、おさえておけないものLet it go
let it go
Turn away and slam the doorこれでいいの
これでいい
背を向けて、扉を閉ざすのI don’t care
what they’re going to say
Let the storm rage on
The cold never bothered me anywayもう気にしない
誰がなんと言おうと
嵐よ、吹き荒れるがいい
もともと冷たいの苦じゃないしIt’s funny how some distance
Makes everything seem small
And the fears that once controlled me
Can’t get to me at allおかしいわ、遠く離れてみると
何もかもが小さなことだった気がする
かつてわたしを支配していた恐怖心も
どうってことなくなったIt’s time to see what I can do
To test the limits and break through
No right, no wrong, no rules for me
I’m free!今こそ自分の力を試すとき
限界を超えて突き抜けろ!
正解も不正解もない、わたしを縛る法もない
わたしは自由だ!Let it go
let it go
I am one with the wind and skyこれでいいの
これでいい
わたしは風と空とともにあるLet it go
let it go
You’ll never see me cryこれでいいの
これでいい
もう泣かないHere I stand
And here I’ll stay
Let the storm rage onわたしはここに立っている
ここがわたしの居場所
嵐よ、吹き荒れるがいいわたしの力は空を舞い、地にふりおちる
わたしの魂は雪の結晶、あたり一面に渦を巻く
そして思いひとつ、凍てつく突風のように氷を築くI’m never going back
the past is in the pastもう戻らない
過去は過去Let it go
let it go
And I’ll rise like the break of dawnこれでいいの
これでいい
夜明けのようにわたしは立ち上がるLet it go
let it go
That perfect girl is goneこれでいいの
これでいい
優等生はもう終わりHere I stand
In the light of day
Let the storm rage on
The cold never bothered me anyway!陽の光を浴びて
わたしはここに立っている
嵐よ、吹き荒れるがいい
もともと冷たいの苦じゃないし
let it go とはどういう意味か?
さて、まず最初に、タイトルの let it go とは、どういう意味でしょうか。
わかりやすい例え話をすると、
手にふくらんだ風船を持っているとしますよね。
手をパッと離すと、風船が空へと飛んでゆく。
この「手をパッと離す行為」が、let it go ですね。
この曲の歌詞の中でこういう一節がありますよね。
Let it go
let it go
Can’t hold it back anymoreこれでいいわ
これでいい
もう、おさえておけないもの
hold back = 押さえて引き止めておく
この部分なんか、上の例えがそのまま当てはまりますよね。
で、この例えの風船に当たるものが、この映画では、「エルザの魔力(感情)」であり、「みんなにバレてしまってすっちゃかめっちゃかになってしまった状況」であるわけです。
日本語のタイトルは『ありのままで』になっていますけど、「ありのまま」だと、「本来の自分で」みたいなニュアンスにも感じられるので、もとの意味合いとくらべると、ちょっと狭くなっているような気もしますし、ズレてるような気もします。
「let it go の本当の意味はまったく違う!」とか目くじら立てるほどのことではないかもですね。
具体的にエルザがこの歌でくりかえす「let it go」は、「もうこうなっては仕方がない。この状況を受け入れて、くよくよするのはやめましょう」それから「魔力を(自分の感情を)おさえつけずに、あるがまま出していきましょう」という意味だと思いましたので、私は「これでいいの」と訳しました。
it looks like I’m the Queen
ちょっと自虐的なニュアンスが伝わってくるこのフレーズ。
A kingdom of isolation
and it looks like I’m the Queen孤独の王国
そしてさながらわたしはここの女王さまといったところね
この it looks like という言い回し、こんな感じで、かるく皮肉っぽいニュアンスで使われることがよくありますね。
it looks like =
どうやら〜のようね
さしずめ〜といったところかしら
必ずしもそういう意味になるとは限りませんが、ちょっと斜に構えた視点を出したいときとか、覚えておくと英会話に使えるフレーズだと思います。
Heaven knows I’ve tried
この歌、けっこう文学的というか、詩的なフレーズがとりわけ多い一曲ですが、そのひとつがこの部分。
The wind is howling like this swirling storm inside
Couldn’t keep it in
Heaven knows I’ve triedこの身に渦巻く嵐のように、風は鳴る
おさえきれなかった
わたしはちゃんと努力したわ
howl = 吠える、ヒューヒュー鳴る
swirl = 渦を巻く
inside というのはエルザの中、を指していますよね。
エルザの中に抑えきれずに渦を巻く感情のように、風が吹いている。
そんな光景が描写されています。
最後の行に出てくる
Heaven knows
(天は知っている)
というフレーズ。
日本語にも「お天道様が見ている」なんて言葉がありますよね。
日本語では「悪いことはできない」という意味ですが、英語のこの熟語の場合は「神様はちゃんと見てくれていた」、つまり
Heaven knows = 確かに紛れもない事実
という意味になります。
つまりこのフレーズでエルザは
Heaven knows I’ve tried
(わたしはちゃんと努力したわ)
という意味のことを言っているんですね。
言いかたを変えると、「わたしはやれるだけのことはやったわ」という気持ちをうったえているんだと思います。
もちろん「わたしが努力したことを神様はちゃんと知っているわ」と訳しても間違いじゃないですね。
Turn away and slam the door
Turn away and slam the door
背を向けて、扉を閉ざすの
turn away = 顔をそむける、同情しない
slam = (ドアなどを)バタンと閉める
ここは、「冷たくくるっと背をむけて、後ろ手にドアを勢いよく閉める」というイメージですね。
世俗と別れ、自分ひとりで生きてゆく覚悟、が描写されているのだと私は感じました。
get to someone
And the fears that once controlled me
Can’t get to me at allかつてわたしを支配していた恐怖心も
どうってことなくなった
get to someone = 〜を嫌な気持ちにさせる、滅入らせる
エルザの魔法が氷の城を築く描写
さて次にあげる3行は、この歌詞でいちばん詩的で文学的なくだりです。
英語はちょっと難しいですが、いわゆるこの歌でいちばんカッコいい見せ場みたいなところなので、しっかり理解しておきたいところです。
My power flurries through the air into the ground
My soul is spiraling in frozen fractals all around
And one thought crystallizes like an icy blastわたしの力は空を舞い、地にふりおちる
わたしの魂は氷の結晶、あたり一面に渦を巻く
そして思いひとつ、凍てつく突風のように氷を築く
ここはいわゆる、エルザが魔力で城を築いている様を詩的なボキャブラリーを駆使して表現しているんですね。
まずは1行目。
My power = 私の力(エルザの魔力のこと)
flurry = 吹雪く、(雪などが)ふる
つまり
My power flurries through the air into the ground
この1行はエルザが自分の魔力を吹雪に例えているんですね。
魔力が雪の形で空中にポッとあらわれ、地上に落ちてゆく。
そんなイメージが浮かんできます。
次に2行目。
spiral = らせん状に舞い上がる(または舞い落ちる)
fractal = フラクタル
all around = あたり一面に
「フラクタル」とは、wikipediaをみてみると、「数学者マンデルブロが導入した幾何学模様の概念」などと小難しいことが書いてありますが、ここでは単純に雪の結晶を拡大したあの模様のことを言っているのだと思います。
つまり
My soul is spiraling in frozen fractals all around
は、
「わたしの魂は、雪の結晶ひとつひとつの模様となって、あたり一面に、らせん状に舞う」
ということを言っているようですね。
最後に3行目。
one thought = ひとつの考え
この言葉は「エルザが頭に思い浮かべているモノ」のことを指していると解釈するのが自然ですね。
crystallize = 結晶化する
これは明らかに、「氷があらわれる」ことを、詩的に、こういう言い方をしているんですね。
icy = 氷の
blast = 突風
つまり icy blast で、「氷のようにものすごく冷たい突風」という意味になりすね。
例えば水が流れているとしますよね。
そこに氷のようにものすごく冷たい風が吹いて、一瞬にして、その流れの形のまま、その水が氷に変わってしまう。
そんな光景を想像してみるとわかりやすいと思います。
つまり
And one thought crystallizes like an icy blast
は、
「わたしがちょっと頭に思い浮かべるだけで、まるで冷たい突風が吹いたように、たちどころにそれが氷の形をともなってそこにあらわれる」
という様をあらわしていると解釈できます。
まとめると、この3行は、エルザの魔法によって、まず雪が空中にポポポッ、とあらわれ、その雪の結晶がらせん状に舞い、ものすごく冷たい風となって、氷の城がバキバキと築かれてゆく、ということ。
映画の画面を見るとわかりますけど、エルザが魔力を使うとき、パーッと雪の結晶が細かく空中にほとばしり出て、氷があらわれますよね。
この3行は、そんな様子をそのまんま詩的な文章で描写しているわけです。
とても力強くてかっこいい文章ですね。
ビジュアル描写という点では、この歌詞の圧巻部分だと思います。
That perfect girl is gone
ここの「perfect girl(完璧な少女)」というのは、「親の言いつけをちゃんと守るよい子」を指しているんですね。
親の言いつけとは、エルザがこの歌詞の中で言う、これらの言葉のこと。
Don’t let them in
don’t let them see
Be the good girl
you always have to be人を入れないようにね
人に見られないようにね
いい子でいるんだよ
どんな時でもConceal
don’t feel
don’t let them know隠すのよ
感情をおさえるの
バレないように
つまり
That perfect girl is gone
は、
「親の言いつけを素直に守るいい子ちゃんはもう終わり」
と言う意味に私は解釈しましたので、
「優等生はもう終わり」
と訳しました。
あとがき – Let It Go 各国語ランキング
さて、この「Let It Go(ありのままで)」という歌そのものの意義については、以前に書いた記事「Frozen Heartの歌詞で英語の勉強」で触れましたので、最後は雑談でもしたいと思います。
この「Let It Go(ありのままで)」は、吹き替えの松たか子さんの歌がとても評判よかったですね。
私は世界中の吹き替えと比べて、松たか子さんの歌はどれだけ素晴らしいのか興味があり、全45ヶ国語でこの「Let It Go」をフルで聴いてみました。
私の好みでベスト8を選ぶとするなら、こんな感じになります。
(クリックすると別窓でYouTubeにとびます)
1位 トルコ語
2位 マレーシア語
3位 セルビア語
4位 松たか子
5位 エストニア語
6位 台湾北京語
7位 韓国語
8位 北京語
考慮に入れた要素は声、言語の響き、そしてエルザっぽさです。
ただ歌がうまいだけ、みたいなのは選んでません。
確かに松たか子さんの歌は全世界でもトップクラスの素晴らしさでしたね。
それに全体的にアジア方面が頑張ってる印象ですね。
ただし広東語だけは微妙でしたけれど。
ちなみに、世界の人々が選んだランキングをみてみると、マレーシア語やセルビア語、エストニア語はだいたい上位に入っていますが、トルコ語を上位に選んでいる人は少ないですね。
私にとってはエキゾチックな言語の響きがあまりにもツボで、トルコ語が文句なしの1位でした。
でも世界的にいちばん評判がいいのはマレーシア語じゃないでしょうかね。
皆さんはどの言語がお好みでしょうか。
最後はダジャレ画像で…
コメント
素晴らしい解説、ごちそうさまです。
スッキリしました。
ありがとうございます。