日本語に「閑話休題(かんわきゅうだい)」って言葉がありますよね。
口語にすると「それはさておき」という意味です。
タランティーノの『イングロリアス・バスターズ』を見ていて初めて知ったんですが、英語にもこれと同じ意味の言葉があるんですね。
というわけで、本日は「閑話休題(それはさておき)」を意味する英単語を皆さんとシェアしたいと思います。
英文の引用と和訳:ランダ大佐とアルド中尉の会話
映画がはじまって2時間8分40秒くらいからの部分。
捕捉されたアルド中尉とウティヴィッチと、ランダ大佐の会話です。
ちなみにト書き部分はタランティーノの脚本から文章を引用しています。
COL. LANDA : I’m sure this mission of yours has a commanding officer. A general. I’m betting for OSS would be my guess.
(Aldo’s eyebrows reveal that was a good guess)
COL. LANDA : That’s a bingo! Is that the way you say it? “That’s a bingo.”
LT. ALDO : You just say, “Bingo.”
COL. LANDA : Bingo! How fun. But I digress. Where were we? Yeah! Make a deal.ランダ大佐「君たちの任務にも司令官というものがいるはずだ。いわゆる大将だな。私の勘では……OSSといったところか」
(アルドの眉毛が「いい勘してるな」と物語っている)
ランダ大佐「こいつは大当たり! ……で、合ってるかい? “こいつは大当たり”」
アルド中尉「“大当たり”だけでいいよ」
ランダ大佐「大当たり! 楽しいねえ。……それはさておき。どこまで話したっけ? そうだ、取り引きの話しだ」
閑話休題(それはさておき) – but I digress
ここのランダ大佐のセリフに出てくるこの言葉。
But I digress = 閑話休題、それはさておき
日本の辞書で「閑話休題」の意味を調べてみると、こんな風にのっています。
余談を打ち切って、本筋にもどる意を表す語
but I digress も、まったく同じように使えます。
digress とはどういう意味かというと、
digress = (話・文章で)わき道へそれる、本筋を離れる
つまり but I digress を直訳すると「おっと、余計な話しをしてしまったね(本筋に戻そう)」ということですね。
しかし、この言葉の時制、パッと見ちょっと違和感がありますよね。
I digress は現在形なので、むしろ「私は本筋を離れる(これから余計な話しをします)」という意味に受け取りたくなります。
「私は余計な話しをしていた(これから本筋に戻す)」なら
but I digressed(おっと、話しがわき道にそれた)
と過去形にした方が日本人のわれわれにはしっくりきませんか。
と思ったら、海外の英語の質問サイトで同じ疑問を投げかけている人がいました。
(質問しているのはアラビア系の方っぽいですが)
What does the idiom/phrase “but I digress” mean?
上の記事のいくつかの答えを要約すると、but I digress は、but I’m digressing と同じことで、「今、自分は本題を外れて余計な話しをしている(だから元に戻そう)」という意味で現在形になっているんですね。
英語には now I see(なるほど)という熟語がありますが、これが now I saw じゃないのと同じようなことなんだそうです。
日本語は現在形と未来形が同じですから、現在形だとちょっと未来につながるニュアンスがたちのぼるので、こんな違和感が出るのかもしれませんね。
(アラビア語も時制がないらしいですからね)
ちなみに but I digress 直後のランダ大佐のセリフに
Where were we? = どこまで話してたんだっけ?
という慣用句がありますね。
これもセットで覚えておくと使い英会話で勝手がよいかもしれません。
その他の注目ボキャブラリー
OSS = Office of Strategic Services = 戦略諜報局
第二次世界大戦中のアメリカ軍の特務機関。
現在のCIAの前身。
guess = 推測、憶測
bingo = ビンゴ、当たり!、やった!
make a deal = 取り引きする
あとがき
本日はタランティーノの『イングロリアス・バスターズ』から、「but I digress(閑話休題、それはさておき)」という言葉をご紹介しました。
ちなみに日本語の「閑話休題」も、少し前まではよく「本題を外れてこれから無駄話しをします」という間違った意味で使われることがよくありましたね。
「役不足」の誤用などと同じで、いろいろなところで指摘する文章が出回ったので、最近ではあまり間違った使い方を見なくなってきました。
一時期、雑誌のコーナー名などで、とりとめない無駄話をするような記事に「閑話休題」ってタイトルをつけるのが流行りましたけど、日本語の場合はそれが間違った印象を広めた原因かもしれません。
まあ原因は違えど、英語も日本語もこの言葉が逆の意味に受け取られる危険性を孕んだボキャブラリーだということは確かなようです。