本日はタランティーノの映画『イングロリアス・バスターズ』のラストシーンから、「〜に囚われる」「叱る」を意味するちょっとおもしろい英語表現をご紹介します。
英文の引用と和訳:アルド中尉とランダ大佐の会話
引用したのは以下の会話。
アルド中尉と、アメリカ軍に降伏することになったランダ大佐の会話。
映画本編では始まって2時間27分12秒のところです。
(ト書き部分はタランティーノの脚本から文章を引用しています)
LT. ALDO : Utivich, cuff the Colonel’s hands behind his back.
COL. LANDA : Is that really necessary?
LT. ALDO : I’m a slave to appearances.(Then Aldo takes the Luger and SHOOTS HERRMAN DEAD.
The bound Col. Landa is appalled.)LT. ALDO : Scalp Hermann.
COL. LANDA : Are you mad!? What have you done!? I made a deal with your general for that man’s life!
LT. ALDO : Yeah, they made that deal. But they don’t give a fuck about him. They need you.
COL. LANDA : You’ll be shot for this!
LT. ALDO : Nah, I don’t think so. More like chewed out. I’ve been chewed out before.アルド中尉「ユティヴィッチ、大佐を後ろ手に手錠をかけろ」
ランダ大佐「その必要はないんじゃないかね?」
アルド中尉「オレは形にこだわる主義でな」(アルド、銃を取り出し、ヘルマンを撃ち殺す。
拘束されたランダ大佐、唖然とする)アルド中尉「ヘルマンの頭皮を剥げ」
ランダ大佐「気でも狂ったか!? なんてことを! お前の上司にこの男の命は保証させたはずだ!」
アルド中尉「ああ、保証したけどよ。こいつの命なんて気にしちゃいねえよ。必要なのはオメーだ」
ランダ大佐「銃殺刑ものだぞ!」
アルド中尉「いやあ、そこまではいかねえよ。せいぜいこっぴどく叱られるくらいだ。こっぴどく叱られたことは前にもあらぁ」
以下の動画では1分2秒からの部分。
これは映画のラストシーンですので、まだ見てない方にとってはネタバレになりますので気をつけてください。
あと、かなり残酷な描写がありますので、残酷描写が苦手な方は見ないでください。
be a slave to(〜に囚われる)
これはちょっとおもしろい表現ですね。
I’m a slave to appearances
(俺は形にこだわるたちだ)
be a slave to = 〜に囚われる
文字通りには「〜の奴隷だ」ということになります。
例えばこんな感じで使われます。
She’s a slave to fashion.
(彼女は流行に囚われすぎている)
「彼女は流行の奴隷だ」と訳しても日本語としてぜんぜん変じゃありませんよね。
いわゆる「奴隷」という言葉を使うので、ちょっと改善したほうがいいくらいの、「囚われすぎている」みたいなニュアンスですね。
この『イングロリアス・バスターズ』のアルド中尉のセリフは、皮肉っぽいニュアンスを込めて、わざとへりくだった言い方をしていると言えます。
chew out(こっぴどく叱る)
次はこちらの1行からこちらの表現。
More like chewed out. I’ve been chewed out before.
(せいぜいこっぴどく叱られるくらいさ。こっぴどく叱られたことは前にもある)
chew out = こっぴどく叱る
chew というのは「噛む」という動詞ですが、これに out が付いて、「こっぴどく叱る」という表現になるんですね。
語源としては一説によると、人が誰かをこっぴどく叱るとき、いわゆるガミガミ言っているときに、口が激しく動きますよね。
その光景から、叱っている相手をガムみたいに噛んで(chew)ペッと吐き捨てる(out)みたいなイメージが生まれたのではないか、とのことです。
元は第二次大戦中にアメリカの軍隊で生まれた表現らしいので、アルド中尉はちょうど新しく出来たばかりの表現をここで使っていることになりますね。
ちなみにこの chew out と似たような表現として
bawl out = 叱りつける、怒鳴りつける
があります。
また、ひとつの単語で「叱る」を表す単語としては
scold = 叱る、小言をいう
が最も一般的でしょうかね。
併せて頭に止めておきましょう。
その他のボキャブラリー
scalp = 頭皮を剥ぐ
名詞では「頭皮」「戦利品」などの意味になります。
make a deal with = 〜と取引をする
give a fuck = 気にする
これは give a damn、give a rat’s ass、give a shit など、他の言い方がたくさんある熟語ですね。
あとがき
本日は『イングロリアス・バスターズ』のラストシーンから、「〜に囚われる」「叱る」を意味する英語表現をご紹介しました。
この記事をもって映画『イングロリアス・バスターズ』のセリフを使った英語の勉強はひとまず一段落とさせていただきます。
次回からは『パルプ・フィクション』を取り上げようと思います。