映画を使った英語の勉強法は、初心者向けか?
初心者・中級者・上級者をどう定義するかにもよりますが、これはいろいろ意見が分かれるところだと思います。
この記事では、中学生レベルの英語くらいはそこそこ覚えている、程度の方までを「初心者」と呼ぶことにします。
最初に結論からいうと、私がこのブログで紹介している勉強法では、初心者でも映画はじゅうぶん効果的な教材です。
むしろ、上級者になるとちょっとだけ効率が落ちていきますので、初心者から中級者の方に一番おすすめしたいです。
ただし、初心者の方が映画で英語の勉強をする場合、最初のうちだけ、ひとつ余分にやってほしいことがあります。
というわけで、本日は「初心者のための映画で英語勉強法」をテーマに、なぜ初心者でも映画を使った英語の勉強法が有効なのか、その理由と、初心者がより効果的に映画を使って英語を学ぶために必須の条件などを書き綴りたいと思います。
映画は中級クラス以上の教材だからこそ初心者に有効
〜序文的な
映画を使って英語を勉強する際、気をつけることとして、こんなことを聞いたことがあります。
・映画は自分の英語能力に合った作品を選ぶべき
私はこれ、人によってはまったく気にする必要のないことだと考えています。
要はモチベーションの問題なんですね。
教材が難しいとそれだけ勉強が大変になるかもしれませんが、その難しさが苦にならないなら、私が推奨している勉強法では教材は難しければ難しいほど効果が期待できる、という結論になるのです。
本日の記事はちょっと極論ぽい内容に感じられる方もいらっしゃるかと思いますが、すべて実体験に基づいた根拠のある考えを記事にしていますので、ついてこれる方はぜひ参考にしてください。
映画を使った英語勉強法が初心者にも有効な理由
多聴と精聴についてのおさらい
ここで前に書いたことの繰り返しになりますが、英語のリスニングには「多聴」と「精聴」が大切、と以前の記事で言いました。
もう耳にタコができるほどこのブログでは繰り返し書いていることですが、改めて説明したいと思います。
(既にお読みになっている方は次の見出しまで飛ばしてください)
まず「多聴」とは、英語をたくさん聴くリスニング鍛錬法のこと。
聴き取れないところがあっても一時停止などせず、意識を集中して、とにかく量を聴きまくる。
よく言われている「英語の聞き流し」というのがこれにあたります。
そしに対して「精聴」とは、英語をじっくり聴くリスニング鍛錬方。
聴き取れないところがあったら巻き戻して同じ部分を何度も何度も聴く。
それでもどうしても聴き取れなかったら、テキストを確認する。
わからない単語・熟語・文法・構文があったら、しっかり調べる。
そして文章を完璧に理解した上で、さらにその部分を何度も繰り返し聴いてゆく。
私はこのブログで、「精聴」を重点的にやり、それと並行して「多聴」も時間の許す限り取り入れてゆくこと。
そして「精聴」の教材として映画を使うことを、おすすめしています。
(詳しくはこのページの最後にリンクを貼りますので、参照してください)
多聴と精聴の重要ポイント
さて、ここからが新しく書くことになりますが、この「多聴」と「精聴」という勉強法は、そもそも「多読」と「精読」の理論をリスニングに応用したものなんですね。
私の学生時代には英語の読解力を身につけるには「多読」と「精読」が効果的、というのはよく言われていましたが、「多聴」と「精聴」なんて言葉は一度も聴いたことありませんでした。
そのうち、私のリスニング勉強法を人に説明するときにわかりやすいと思って、「多聴」と「精聴」という言葉を自分で考案したんですが、まあ、みんな同じようなことを考えるもので、今ではGoogleで検索しても「多読 精読」より「多聴 精聴」の方が出てくるサイトが多いくらいです。
それとも、私が知らなかっただけで、「多聴」と「精聴」という言葉も何十年も前からあったんでしょうか?
話が脇道にそれましたが、まあそんな感じで、「多聴」と「精聴」がリスニングの上達にとって欠かせない勉強法であることは、現在では議論の余地がありません。
ところが、「多読」と「精読」では常識なのに、「多聴」と「精聴」ではあまり指摘されていない大切なポイントがひとつあるんですね。
そのポイントとは、
多聴……自分の英語レベルに合った、あるいは低いレベルの教材を選ぶ
精聴……自分の英語レベルより高い(難しい)教材を選ぶ
という点です。
私は精聴の教材として映画をおすすめしていますが、この「精聴」という勉強法、難しい教材であればあるほど素晴らしい効果を発揮するんですね。
「映画を使った勉強法は初心者向けじゃない」と言われている理由は、「映画は初心者が使う教材としては難しすぎるから」というものです。
つまり、初心者向けに作成されたリスニング教材などを先にマスターしてから、映画やドラマなど、より実用的な教材に取り掛かるべきだ、というわけです。
もうひとつ、基本的な文法や構文をろくに知らないで勉強するには、映画やドラマの会話は難しすぎる、ということも言われています。
しかしこの、ちょっと(あるいは、かなり)ハードルの高いところから勉強を始められて、一気に初心者から中級者レベルまで英語力を引き上げるために最適な教材こそが、映画なんですね。
難しさに限度はあるのか?
さて、「精聴の教材はハードルが高いほどいい」とは言っても、限度があるんじゃないか?
あまりにも難しすぎて、ぜんぜん勉強にならないとか、モチベーションを維持するのが大変なのではないか?
と、お考えになる方もいらっしゃるかと思います。
そこでひとつ、参考までに、私が30年ほど前にフランス語の勉強をはじめたときの経験をお話ししたいと思います。
私が使用したのは映画ではありませんでしたが、本日の記事で私が主張したいことのポイントは伝えられると思います。
私がフランス語の勉強をはじめたばかりの頃、まだ基本文法を習って1ヶ月くらいの初心者の頃に、独学でラディゲの『肉体の悪魔』というフランス語の小説を原書で読みはじめたんですね。
ただ読むだけではなく、オーディオブックを入手して、多聴と精聴も同時にはじめました。
ちなみに、私がこのブログで紹介している英語の勉強法を確立するに至ったその出発点が、このラディゲの『肉体の悪魔』なのです。
この『肉体の悪魔』の原書とオーディオブックを使って、なるべく少ない努力と時間で、最大の効果が上がる勉強法はないものかと、いろいろ試行錯誤を繰り返していった成果が、このブログで書いていることに繋がっているんですね。
さて、そんなわけでラディゲの『肉体の悪魔』の原書とオーディオブックで精聴をはじめた私ですが、なにぶん初心者でしたので、最初は大変でした。
当時の私は学生で時間がありましたので、1日5時間くらいフランス語の勉強に費やしましたが、それでもその5時間をかけてやっと10行くらいを読むのがやっと。
後になって振り返ってみたら、ラディゲの『肉体の悪魔』の文章はかなり難解な部類に入るものでした。
それでも私は読書が好きだったので、苦じゃなかったんですね。
むしろ、次第に未知の世界が解き明かされてゆくようで、楽しかったんです。
それに、とにかく私が確立した語学の勉強法は効率がよく、上達が早かったので、日に日にフランス語がわかるようになり、5時間かかって1日10行をフーフーいって読んでいたのが、だんだん1日1ページ読めるようになり、それが1日2ページ、3ページと増えていって、最後のほうでは1日5ページ読めるようになっていました。
そんな感じで、初心者にして結局たった1ヶ月もしないうちに、難解なラディゲの『肉体の悪魔』を完全読破してしまったんです。
その後も、1ヶ月に1冊くらいのペースでフランス語の本を読みすすめていきまして、フランス語を勉強しはじめて1年くらいで10冊のフランス語の本を読破していました。
(その中には千ページ以上の本もありました)
私が確立した勉強法の上達の早さを示す現象のひとつとして、ラディゲの『肉体の悪魔』を読んでいる期間中に、フランス語の雑誌をパラパラめくっていて、同じ記事が数日の差でぜんぜん理解できるようになっているのをはっきり感じたりしました。
これも、難易度を気にせず、ただ好きか嫌いかで教材を選んで、じっくり精読・精聴をやっていった結果だと思っています。
つまり私はこの経験を語ることで何を言いたいのかというと、
好きな映画や小説を使うからこそ、教材のレベルを上げられる
ということなんです。
語学の勉強、特に精読・精聴には、概してこの2つのジレンマが存在します。
・教材が難しければ難しいほど、勉強するのがツラくなる
・教材が難しければ難しいほど、勉強になる
この2つのジレンマを埋めるキーワードが、「自分が好きな教材を選ぶ」という点なのです。
ただし、映画をあまり好きではない人が、味気ない参考書よりはマシだと思って映画を教材に選ぶ場合は、やっぱり自分の英語能力のレベルに合った作品を選ぶほうがいいとは思います。
例えば私の場合、教科書だとか参考書で英語を勉強するのは、どんな簡単なものでも苦痛ですが、映画や小説で勉強するなら、どんな難しいものでも苦に感じません。
あくまでも映画が大好きな人、あるいは何度でも見たいような大好きな映画がある人限定ですが、映画は初心者が一気に英語力をあげるのに最適の教材なんですね。
初心者の方がやるべきこと – 構文を把握する
さて、映画を使った英語の勉強法は、やる気さえあるなら、初心者にとっても効果的であると、ここまで書いてきました。
ただし、初心者の方が映画で英語を勉強する場合、ひとつだけ、余計にやってほしいことがあります。
それが、「構文」の勉強です。
構文というのは、文章の構造、つまり以下のようなことですね。
S + V
S + V + C
S + V + O
S + V + O + O
S + V + O + C
S…主語
V…述語
C…補語
O…目的語
これはどういうことかというと、「英語を理解する」ことの一番のポイントが、構文がちゃんとわかっているかどうか、なんですね。
例えば、
I love you.
という文章があるとします。
あなたはこの文章の意味がわからない。
そこで辞書で調べてみると、こんな風に載っていました。
I…私
love…愛している
you…あなた
そこであなたは、なるほど、
I love you
は
「私はあなたを愛しています」
という意味だな、と知ることができる。
しかしこれは、ちゃんと「英語を理解した」ことになるか、というと、ならないんですね。
これは単に、単語から文章の意味を想像して、それがたまたま当たった、というだけです。
文章をパッと見て、ひとつひとつの単語の意味がわからなくても、どれが主語で、どれが述語(動詞)で、それに続く言葉が目的語なのか、補語なのか、はたまた副詞なのかがわかる。
例えば上にあげた例文でいうと
I love you
(S + V + O)
ということをすぐに認識できるかどうか。
英語をちゃんと理解するとは、こういうことを言うんですね。
この構文の把握を曖昧にしたまま、ただむやみに難しい英語の文章を、辞書を引き引き読んでも、あまり英語の本質的な理解には至りません。
なので、初心者の方は構文の勉強を並行してやってください。
具体的な構文の勉強方法ですが、あまりにも記事が長くなりすぎてしまうので、以下の別の記事にまとめました。
(このページの最後にも改めてリンクを貼ります)
初心者は英語の構文をやるべし! 楽しく構文に慣れる構文勉強法
私は高校時代に英語を勉強したときは、まず1年くらいみっちり構文をとる練習をやりました。
フランス語の勉強を始めたときは、フランス語の構文はある程度、英語と似ているので、最初の2ヶ月くらいでしたけれども、やはり構文をとる練習はやりました。
今、振り返ってみても、最初に構文をしっかりやっていたからこそ、その後の勉強が効率よく進んだのだと感じています。
やると決めたら雑音を気にしない
結論としては、効率のことを考えたら、映画は初心者から中級者にかけてが一番おいしい教材だと私は考えています。
初心者とは言っても、中学英語程度の知識もない、というかたは、かなり難しいかもしれません。
しかし、その難しさを楽しめるのであれば、大いに最初から映画で英語の勉強をすることをオススメします。
例えば、もし私が今からロシア語を習うとしたら、難易度は考えず、最初からロシアの映画か小説でおもしろそうなものを探してそれで勉強をはじめます。
ただし、初心者の方は、どう調べてもわからない文章に出くわす、といった、壁にぶつかる確率が高くなりますから、いつでも質問できるネイティブの知り合いを見つけておくとか、どこかの教室に通うとか(先生にいつでも聞けるので)、そういった環境的な面が整っていると何かと都合がいいです。
ただ私の経験では、そういった環境を整えると「君にはまだそんな文章を勉強するのは早すぎるよ」だとか「そんな言葉、滅多に使わないから君のような初心者のうちから覚える必要ないよ」みたいな雑音がどんどん耳に入ってきます。
とにかくヤルと決めたら、そういった雑音に屈しないことが肝心です。
後はひたすら、1日2時間かけてひとつのセリフをやっと理解する、みたいな段階からでもいいので、やる気があるなら、ぜひ頑張ってみてください。
ただ難しいとはいっても、私がこのブログで紹介している、リスニングの精聴に重点を置いた勉強法は上達が早いので、これはちょっと難しすぎるんじゃないか、と思うのは最初だけです。
恐らく数週間から、早い方で数日の単位でどんどんハードルは下がっていくんじゃないでしょうか。
あとがき
初心者のための映画で英語勉強法、本当はもっと書きたいこといっぱいあったんですが、記事が長くなりすぎてしまうので、簡潔にまとめました。
もともと本日の記事は、去年の12月に書きはじめて、あまりにも長くなってしまったのでいったん「映画で英語を勉強するのは効率が悪い?」という記事としてアップした、その続きなんですね。
初心者の方にオススメの英語の構文を把握する勉強法について書いた記事はこちらです。
ぜひ本日の記事と併せて参考にしてくださればと思います。
それでは最後に、本日の記事で言及した「多聴」と「精聴」についてもっと詳しく知りたい、という方は、ぜひ以下の記事を読んでみてください。
あと、英語を勉強する際、わからない言葉が出てきたときの検索方法について記事を書いていますので、ぜひ参考にしてみてください。
以上、皆さまの英語の勉強に少しでもお役に立てたら嬉しいです。