タランティーノの映画『パルプ・フィクション』の冒頭の会話で英語の勉強パート3。
今回はいよいよ強盗を働く寸前、パンプキンが飲食店を襲うメリットをハニー・バニーに説明する部分です。
英文の引用と和訳:パンプキンとハニー・バニーの会話
上の動画では0:13のところ。
映画本編では始まって3分6秒くらいのところです。
HONEY BUNNY : This place? A coffee shop?
PUMPKIN : What’s wrong with that? Nobody ever robs restaurants. Why not? Bars, liquor stores, gas stations. You get your head blown off sticking up one of them. Restaurants, on the other hand, you catch with their pants down. They’re not expecting to get robbed. Not as expecting anyway.
HONEY BUNNY : I bet you could cut down on the hero factor in a place like this.
PUMPKIN : Correct. Same as banks, these places are insured. Manager. He don’t give a fuck. They’re just trying to get you out before you start plugging the diners. Waitresses. Fuckin’ forget it. No way they’re takin’ a bullet for the register. Busboys. Some wetback getting paid $1.50 an hour really give a fuck you’re stealing from the owner? Customers sittin’ there with food in their mouths, they don’t know what’s goin’ on. One minute, they’re having a Denver omelet, the next, someone is sticking a gun in their face.ハニー・バニー「ここを? 喫茶店を?」
パンプキン「なんか問題あるか? 喫茶店で強盗なんて前代未聞だぜ。いいじゃん? バーに酒屋、ガソリンスタンド。襲えば撃たれておしまいだ。飲食店はその点、不意をつける。強盗なんて思いもよらねえ。そうだとしても、どうせたかが知れてる」
ハニー・バニー「犯罪映画の主人公にはなれそうもないわね」
パンプキン「そういうこと。銀行と同じく、こういう店は保険がかけてある。まず店長だろ。気にしゃしねえ。客が撃ち殺される前にコトを収めさえすればそれでいいんだ。ウェイトレス、もう問題外。レジの金を守るために命を投げ出すかよ。皿洗い、時給1ドル50セントのメキシコ不法移民が、オーナーのフトコロから盗まれるのを心配するか? 客ときたらメシを頬張るのに夢中で、何が起こってるのかわからない。それまでデンバーオムレツを食っていたかと思ったら、いつのまにか何者かに拳銃を突きつけられてる、ってなわけさ」
catch someone with one’s pants down
今日の英語の勉強のメインはこちらのフレーズ。
Restaurants, on the other hand, you catch with their pants down
(飲食店はその点、不意をつける)
この1行に、おもしろい表現がありますね。
catch someone with one’s pants down = 〜の不意を突く
catch は「つかまえる」という意味が知られていますが、「目撃する」という意味もあります。
pants down は「パンツをおろす」。
なので、文字通りには「パンツを下ろしていたところを目撃する」という意味ですね。
かなり明快な比喩なので、これが「不意を突く」という意味になるのはわかりますね。
他にも、この catch someone with one’s pants down は「まずいところをつかまえる」とか「弱みを握る」などのニュアンスもあります。
けっこう映画でよく聞くので、覚えておくとリスニングに役立つと思います。
plug the diners
ちょっと理解に苦しむのがこちらのセリフ。
They’re just trying to get you out before you start plugging the diners.
(客を撃ち殺す前に追い出したいだけだ)
ここに plug the diners という難解な表現がありますね。
diners は、辞書には「食事をする人」「ディナーの客」と載ってますが、要するに飲食店のお客さんのことですね。
plug はカタカナ英語にもなっている「プラグ」つまり「(電化製品などに、プラグなどを)接続する」とか「栓をする」とか「(穴を)塞ぐ」などの意味です。
しかし、この映画のセリフはかなり特殊な用法で、
plugging the diners = 客を銃で撃つ
という意味になるそうです。
「撃つ(shoot)」の意味で plug という動詞が使われているんですね。
これは調べてみたところ、1930年代のシカゴでギャングが使っていた用法だそうです。
昔のマフィアの業界用語みたいなものでしょうかね。
タランティーノお得意の「おもしろい表現」ですが、実用的な英語ではないので、リスニング用に頭に留めておきましょう。
one minute 〜 next …
最後は前にも紹介したことのあるこちらのフレーズ。
One minute, they’re having a Denver omelet, the next, someone is sticking a gun in their face.
(それまでデンバーオムレツを食っていたかと思ったら、いつのまにか何者かに拳銃を突きつけられてる)
one minute 〜 next … = 少し前まで 〜 かと思ったら、もう … になった
この熟語はコールドプレイの『Viva La Vida』の歌詞を解説したときにも出てきましたね。
その他の注目ボキャブラリー
stick up = 上に突き出る、ピストルで脅す、強盗を働く
cut down on = 切り詰める、省く、量を減らす
factor = 要因、要素、因子
insured = 保険に加入した、保険契約者
give a fuck = 気にする、問題だと思う
take a bullet for 〜 = 〜の身代わりになって撃たれる
文字通りには「〜のために銃弾を受ける」。
この表現は「非難を受ける」「責任をとる」という比喩的な意味で使われることもあります。
wetback = アメリカに不法入国したメキシコ人
文字通りには「濡れた背中」という意味。
「メキシコからリオ・グランデ川を泳いでアメリカに渡ってきた」という皮肉から付けられた差別用語だそうです。
あとがき
本日でタランティーノの映画『パルプ・フィクション』冒頭のシーンの解説は終わりです。
ちなみに映画の裏話ですが、このシーンの会話はパンプキンを演じるティム・ロスと、ハニーバニーを演じるアマンダ・プラマーのために、タランティーノが当て書きしたんだそうです。
また、2人がキャスティングされる前、パンプキンはジョニー・デップ、クリスチャン・スレイター、ゲーリー・オールドマン、ニコラス・ケイジ、エリック・ストルツなど、ハニー・バニーはパトリシア・アーケット、ジェニファー・ジェイソン・リー、ブリジット・フォンダ、フィービー・ケイツ、メリッサ・トメイなどが候補に上がっていたとか。
私は個人的にタランティーノ映画に出演しているジョニー・デップとフィービー・ケイツを見てみたかったです。
次回の『パルプ・フィクション』で英語の勉強は、ジュールズとヴィンセントのシーンから何か選んでみたいと思います。