タランティーノの映画『パルプ・フィクション』の会話で英語の勉強をするシリーズ。
今回はジュールズとヴィンセントの会話からお送りする第2弾です。
本日、引用したのは二人のボスであるマーセルスの奥さん・ミアについての会話。
ここらへんからタランティーノらしいおもしろい表現がぞくぞく出てきます。
本日はとくに pilot(パイロット版) という単語と on the strength of という熟語にスポットを当てて解説いたします。
英文の引用と和訳:ジュールズとヴィンセントの会話
上の動画では0:18からの部分。
映画本編では始まって8分55秒くらいからのところです。
VINCENT : What’s her name?
JULES : Mia.
VINCENT : Mia. How did Marsellus and her meet?
JULES : I don’t know. However people meet people. She used to be a actress.
VINCENT : Oh, really? She do anything I’d have seen?
JULES : I think her biggest deal was she starred in a pilot.
VINCENT : Pilot? What’s a pilot?
JULES : Well, you know the shows on TV?
VINCENT : I don’t watch TV.
JULES : Yeah, but you are aware that there is an invention called television, and on this invention they show shows, right?
VINCENT : Yeah.
JULES : The way they pick TV shows is they make one show. That show’s called a pilot. Then they show that one show to the people who pick shows and on the strength of that one show, they decide if they wanna make more shows. Some get chosen and become television programs. Some don’t, become nothin’. She starred in one of the ones that became nothing.ヴィンセント「彼女の名前は?」
ジュールス「ミア」
ヴィンセント「ミアか。マーセルスとはどうやって知り合ったんだ?」
ジュールス「知らん。まあ、人と人は出会うもんさ。彼女は元女優なんだよ」
ヴィンセント「へえ、マジ? 俺が過去に見た作品に出てたことあったかな?」
ジュールス「おそらく彼女の代表作はパイロット版だ」
ヴィンセント「パイロット? なんだパイロットってのは」
ジュールス「そうだな、テレビ番組ってもんがあるだろ」
ヴィンセント「俺はテレビは見ねえ」
ジュールス「ああ、でもテレビというものが発明されていて、その発明品に番組が流れていることは知ってるよな?」
ヴィンセント「おう」
ジュールス「テレビ番組をやるときは、まず1回分だけ作る。それがパイロットっていうんだ。で、その1回分をお偉いさんたちに見せるんだな。その1回分の良し悪しによって、2回目以降も作るかどうか決める。選ばれてレギュラー番組になるものもあれば、選ばれずにお蔵入りになっちまうものもある。彼女はそのお蔵入りしたひとつに出演したってわけだ」
pilot(パイロット版)について
まずはジュールズのセリフにある pilot(パイロット版)についての解説。
ネットの辞書によると
パイロット版とは、放送開始・一般公開に先行して試験的に製作される映像作品の事である。主にTV番組、映画等に於いて呼称される。
と定義されていますね。
さらに詳しく先を読んでみると、「パイロット版」とは、ジュールズのセリフにあるように、テレビ番組の新企画が立ち上がると、まず第1回分だけ製作して、関係者で視聴し、レギュラー番組として正式に製作するかが決められる、その「試作」が「パイロット版」とのことです。
しかし実際には、アメリカではその第1回分を実際に放送し、関係者の意見だけでなく、視聴率などの反応も加味して、レギュラー番組化するかどうかが決定されるパターンの方が多い気がしますね。
実際、この映画の後の方のヴィンセントとミアとの会話によると、ジュールズがここで話しているパイロット版も実際にTVで放送されたことがわかります。
これが日本になると、80年代後半あたりから流行りだしたシステムで、まず深夜放送などで放映し、評判がよかったらゴールデンタイムに移行する、というケースも多いようです。
いろいろなケースはあるにしろ、ひと言の日本語に訳すと「試作」といったところです。
日本語でも最近では「パイロット版」という言葉は普通に使われるようになりましたが、この『パルプ・フィクション』公開当時(1994年)は馴染み薄い言葉でしたっけね。
pilot = 試作 の語源とは?
日本語で pilot つまり「パイロット」というと、「飛行機の操縦士」のイメージが強いですよね。
ではなぜ「飛行機の操縦士」が「試作」という意味になるのか?
英和辞書で pilot を調べてみると
pilot = (飛行機・宇宙船などの)操縦士、パイロット、案内人、指導者
などと載っています。
「試作」の用法はこの「案内人」あたりから「先導する」などの意味に発展し、「最初に作る試作品」というような使われ方をされるようになったんですね。
on the strength of
さて、本日はもうひとつ、覚えておきたい英熟語があります。
ジュールズが pilot(パイロット版)について説明するところ。
The way they pick TV shows is they make one show. That show’s called a pilot. Then they show that one show to the people who pick shows and on the strength of that one show, they decide if they wanna make more shows. Some get chosen and become television programs. Some don’t, become nothin’.
テレビ番組をやるときは、まず1回分だけ作る。それがパイロットっていうんだ。で、その1回分をお偉いさんたちに見せるんだな。その1回分の良し悪しによって、2回目以降も作るかどうか決める。選ばれてレギュラー番組になるものもあれば、選ばれずにお蔵入りになっちまうものもある
ここに on the strength of という熟語がありますね。
strength = 強さ、強度、強み、長所
つまり、on the strength of とは文字通り「〜の力によって」という意味になります。
そこから文脈によって「〜を根拠にして」「〜を見込んで」「〜のおかげで」という風に訳せるわけですね。
今回のパルプフィクションの用例は「〜の良し悪しによって」と理解するのが妥当かと思います。
あとがき
本日は映画『パルプ・フィクション』のジュールズとヴィンセントの会話で英語の勉強第2弾ということで、英語のボキャブラリーを2つほどご紹介しました。
本日引用した会話、英語のボキャブラリーが含まれていなかった部分に、タランティーノらしい魅力的なセリフややりとりがありますね。
例えば
I don’t know. However people meet people.
(知らん。まあ、人と人は出会うもんさ)
日本語に訳すとちょっとヤボったくなりますが、英語はさりげなくイキな言い回しですね。
また、ちょっとクスッと笑える会話のキャッチボールがここ。
JULES : Well, you know the shows on TV?
VINCENT : I don’t watch TV.
JULES : Yeah, but you are aware that there is an invention called television, and on this invention they show shows, right?
VINCENT : Yeah.ジュールス「そうだな、テレビ番組ってもんがあるだろ」
ヴィンセント「俺はテレビは見ねえ」
ジュールス「ああ、でもテレビというものが発明されていて、その発明品に番組が流れていることは知ってるよな?」
ヴィンセント「おう」
いいコンビです。
次回の『パルプ・フィクション』の記事も、そんなジュールズとヴィンセントの会話の続きからお送りいたします。