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ballpark と get (something) down の解説【パルプ・フィクション】

Pulp Fiction - Foot Massage

本日も映画『パルプ・フィクション』のジュールズとヴィンセントの会話から、タランティーノらしいおもしろい英語表現を拾って解説してみたいと思います。




英文の引用と和訳:足のマッサージについての議論

本日ピックアップするのは以下の、ジュールズとヴィンセントの会話。

上の動画では2:20からの部分。
映画本編では始まってから11分くらいのところです。

アントワンという人物がマフィアの親分マーセラスの奥さんの足をマッサージしたために、マーセラスに半殺しの目にあった、との噂について、議論しているシーンです。

VINCENT : Well, Antwan probably didn’t expect Marsellus to react the way he did, but he had to expect a reaction.
JULES : It was a foot massage. A foot massage is nothing. I give my mother a foot massage.
VINCENT : It’s laying your hands in a familiar way on Marsellus’s new wife. I mean, is it as bad as eating her pussy out? No, but it’s the same fuckin’ ballpark.
JULES : Whoa, whoa, whoa, whoa. Stop right there. Eating the bitch out and giving the bitch a foot massage ain’t even the same fucking thing.
VINCENT : It’s not. It’s the same ballpark.
JULES : Ain’t no fuckin’ ballpark neither. Now, look, maybe your method of massage differs from mine. But, you know, touching his wife’s feet and sticking your tongue in the holiest of holies ain’t the same fuckin’ ballpark; it ain’t the same league; it ain’t the same fuckin’ sport. Foot massages don’t mean shit.
VINCENT : Have you ever given a foot massage?
JULES : Don’t be telling me about foot massages. I’m the foot fuckin’ master.
VINCENT : You given a lot of them?
JULES : Shit, yeah! Got my technique down and everything. I don’t be tickling or nothing.

ヴィンセント「まあ、アントワンにとってはマーセラスの仕打ちは予想外だったようだが、そこは察するべきだったな」
ジュールス「たかがマッサージだ。足のマッサージなんてどうってことねえよ。俺はお母さんにだってよくマッサージしてやってるぜ」
ヴィンセント「マーセラスの新婚の奥さんに馴れ馴れしく手を触れるんだぜ。そりゃあ、彼女のあそこをペロペロするほど悪いかっていうと? そこまでじゃないが、同じフィールド内だ」
ジュールス「オイオイオイオイ、よしやがれ。女にクンニするのと、足のマッサージすることは違う」
ヴィンセント「違うけどさ。同じフィールド内だよ」
ジュールス「フィールドも違う。いいか、お前のマッサージのやり方は俺のやり方と違うんだろう。だがな、断じて人妻の足に触るのと、デリケートなアソコに舌を突っ込むのとが、同じフィールド内なんてことはない。同じリーグでもない。同じスポーツでさえない。足のマッサージがなんだってんだ」
ヴィンセント「お前は足のマッサージやったことあるのか?」
ジュールス「足のマッサージについてお前にとやかく言われたくねえよ。俺は足のマッサージの達人だぜ」
ヴィンセント「相当な数こなしてきたのか?」
ジュールス「もちろんだ! テクニックも何もかも手慣れたものさ。くすぐったいとも何とも感じさせねえ」

stop right there

まずは軽いジャブで、このセリフ。

Stop right there.

文字通りには「そこで止まれ」という意味ですね。

タランティーノの映画によく出てくる表現です。

くだらないことや、話しにならないようなことをしゃべっている相手に対して、「もういい、それ以上しゃべるな」という意味になります。

自然な日本語にすると、「その辺でやめておけ」みたいな感じですね。

覚えておくと、親しい友だちとふざけた会話をするときなどに使う機会がありそうですね。

ballpark

本日、引用した会話には ballpark という言葉がたくさん出てきますね。

ballpark = 野球場、フィールド

本来の意味は上のようなことですが、引用した会話では the same ballpark という熟語で出てきます。

辞書をひいてみると、be in the same ballpark という並びで載っています。

意味は、「同じカテゴリ内」とか「同じ部類」とか「同じ範囲内」みたいな意味ですね。

比喩的な表現として理解できますよね。

この ballpark(野球場、フィールド)という表現を受けて、ジュールズが

It ain’t the same ballpark, it ain’t the same league; it ain’t the same sport.
(同じフィールド内じゃない。同じリーグでもない。同じスポーツでさえない)

というおもしろい言い方をしています。

get something down

最後はこのセリフ。
ここはちょっと難しい表現がありますが、タランティーノらしい軽妙なセリフです。

Got my technique down and everything. I don’t be tickling or nothing.
(テクニックも何もかも手慣れたものさ。くすぐったいとも何とも感じさせねえ)

get something down で、「〜について熟練している」「〜について堪能である」という意味になります。

The Free Dictionary に載っていた例文を転載しておきます。

「熟練している」の例文
I know the music is difficult to play, so you just have to keep practicing until you get it down.
(音楽を演奏するのは難しいのはわかってます。だから上達するまで練習あるのみです)

他にも、get something down には「〜を食べる(飲む)」と「〜を書き留める」という意味があります。

「飲み食いする」の例文
I’m just going to get this burger down before I head out the door.
(出かける前にこのバーガーを食べるところでした)

「書き留める」の例文
I always try to get my dreams down as soon as I wake up, or else I forget them altogether.
(わたしはいつも目覚めるとすぐに夢を書き留めておくことにしています。そうしないとすっかり忘れてしまいますから)

and everything は、「その他、なんやかや」「〜とか、その他、何もかも」みたいな意味です。
この後に出てくる or nothing(〜も何もない)と対になっている、タランティーノらしいリズムのよいセリフまわしですね。

あとがき

本日はタランティーノの映画『パルプ・フィクション』から、ジュールズとヴィンセントの会話を取り上げて英語の勉強をしてみました。

このシーンで「マーセルスがアントワンに対してやったことは過激すぎる」と言うジュールズに対して、「たかが足のマッサージとはいえ、奥さんの足を揉んでキモチよくしちゃったんだぜ。それくらいのことはされて当然だ」と主張するヴィンセント。

後のシーンを見れば、ここでヴィンセントがなぜここまでそんなことを主張するのか、わかりますよね。

ヴィンセントはマーセルスの奥さんをデートに連れていく予定になっていますから「たかが足のマッサージでも、親分の奥さんに手を触れるときはそれだけ慎重にならないといけない」と言うことを、ジュールズに主張しつつ、実は自分自身に言い聞かせているわけです。

アメリカの映画評論家ロジャー・イーバートが、この『パルプ・フィクション』は「いっけんストーリーに関係のない無駄な会話が多いように思えて、その実、細かいところまでよく練られている」と言っていましたが、こういうところを言っているんだと思います。

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