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「〜であふれている」「余命いくばくもない」を英語で?【パルプ・フィクション】

are you my nigga?

本日もタランティーノの映画『パルプ・フィクション』から、英会話に役立つ表現、おもしろい表現をピックアップして解説いたします。

タランティーノの脚本は名文の密度が濃いので、全ダイアローグとりあげたいくらいですが、今回は以下のセリフをとりあげました。

マーセルス・ウォレスがボクサーのブッチに、八百長試合の話しを持ちかけるシーンの、マーセルスのセリフです。

The thing is, Butch, right now, you got ability. But painful as it may be, ability don’t last. And your days are just about over. Now, that’s a hard motherfuckin’ fact of life. But that’s a fact of life your ass is gonna have to get realistic about. You see, this business is filled to the brim with unrealistic motherfuckers. Motherfuckers who thought their ass would age like wine. If you mean it turns to vinegar, it does. If you mean it gets better with age, it don’t.
(いいか、ブッチ、今はまだ実力がある。しかし、つらいことだが、実力はいつまでも続くもんじゃない。お前の全盛期はまもなく終わる。そう、それが現実というものだ。しかしお前はその現実と向き合わなければならない。わかるか、この業界は夢見るバカ者どもであふれている。まるでワインのように熟成していくと思ってるバカ者どもでな。それがお酢になっていくって言うんなら、その通り。それが歳とともに味わいが増してゆくというのなら、見当違いだ)

要約すると「お前のキャリアももうすぐ終わりだ(だから素直に俺の言う通りに八百長試合を引き受けて、大金を貰っておいた方がお利口さんだぞ)」と言うことを極めて文学的にしゃべっているセリフですね。

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painful as it may be

まずは以前も解説したことのあるこちらの構文。

But painful as it may be, ability don’t last.
(しかし、つらいことだが、実力はいつまでも続かない)

ここの最初の「painful as it may be」の部分の文法は、以前に以下の記事で詳しく解説しました。

レドモンドとノラの会話から、captain as he is構文について解説しています。この構文の解釈には倒置法だとか分詞構文だとか諸説ありますが、果たしてどちらが本当なんでしょう?

簡単にいうと、ここは

Though it may be painful

と同じ意味です

形容詞(名詞の場合も)+ as 主語 + 述語(動詞)

で、

〜にも関わらず、〜かもしれないが

という意味になります。

結構、映画のセリフに出てくる構文ですので、覚えておくといいと思います。

your days と just about

Your days are just about over.
(お前の全盛期はまもなく終わる)

最初の「your days」ですが、辞書で「one’s days」と調べると、「寿命」「生涯」などと乗っています。

one’s days = 寿命、生涯

文脈からすると、これは比喩的にボクサーとしての「選手生命」を言っているのだと思われます。

次の「just about over」は、「もうすぐ終わり」という意味。

「just about」は「だいたい」とか「ほとんど」という意味。
「over」は「終わり」。
つまり文字通りには「ほとんど終わり」ということ

ちなみにこの「your days are just about over」とほぼ同じ表現で、「your days are numbered」という表現もあります。
「numbered」というのは「カウントダウンに入った」みたいな意味です。

one’s days are numbered = 〜は余命幾ばくもない、〜はもうすぐ

映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』より
He’d call me at the hospital and say: “Son of a bitch, your days are numbered!”
(以前、奴は病院にいる俺に電話をしてきて言いやがった「この野郎、お前の命はもうすぐ終わりだ!」)

ついでに頭に入れておくといいかもしれませんね。

filled to the brim with

This business is filled to the brim with unrealistic motherfuckers.
(この業界は夢見るバカ者どもであふれている

ここに「brim」という見慣れない単語が出てきますね。
Google画像検索などしてみるとわかりますが、通常は「brim」というと帽子の「つば」の部分を指します。
その他にコップや皿などの器の「へり」の部分の意味もあります。

brim = (帽子の)つば、(器の)へり

「filled to the brim with 〜」で、「〜がへりまで満たされて溢れんばかりである」という意味の熟語になります。

どうでもいい余談かもしれませんが、検索してみたらアメリカに「Filled to the Brim」という名前のロックバンドがあるみたいですね。

あとがきにかえて – wine と vinegar の喩え話し

最後にワインと酢の喩え話しについての解説をしておきます。

マーセルスが「ほとんどの人間は歳をとるとボンクラになるが、その自覚がない」という意味のことを、ワインと酢に例えて話しをしています。

Motherfuckers who thought their ass would age like wine. If you mean it turns to vinegar, it does. If you mean it gets better with age, it don’t.
(まるでワインのように熟成していくと思ってるバカ者だ。それがお酢になっていくって言うんなら、その通り。それが歳とともに味わいが増してゆくというのなら、見当違いだ)

私も最近、知ったんですが、これはローマ教皇ヨハネ23世の以下の名言が元ネタなのだそうです。

Men are like wine – some turn to vinegar, but the best improve with age.
(人はワインのようだ。- お酢になってしまう者もいるが、歳とともに味わいを増してゆくに越したことはない)

 * * *

次回は同じシーンの後半部分のセリフの英語を解説したいと思います。

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