本日は映画『レザボア・ドッグス』のミスター・ピンクとミスター・ホワイトの会話をピックアップして英語の解説をしてみたいと思います。
タランティーノの脚本らしく、短い会話の中に、使えそうな英熟語や、使えそうもないけど面白い表現がたくさんあります。
英文の引用と和訳:銀行強盗をした後、集合場所にやってきたミスター・ピンクとミスター・ホワイトの会話シーン
DVDでは始まって23分59秒のところです。
MR. PINK : I got the diamonds.
MR. WHITE : That’s my boy. Where?
MR. PINK : I stashed ‘em. If you wanna come with me, let’s go get ‘em right now, this second. Because I think staying here, man, we should have our fuckin’ heads examined.
MR. WHITE : That was the plan. We meet here.
MR. PINK : Then where the fuck is everybody? I say the plan becomes null and void once we found out we got a rat here. We ain’t got the slightest idea what happened to Mr. Blonde or Mr. Blue. They could both be dead or maybe they’re arrested. The cops could have ‘em right now at the station, sweatin’ ‘em down. They don’t know our names, but they could be singin’ about this place.
ミスター・ピンク「ダイヤモンドは俺が持ってる」
ミスター・ホワイト「でかしたぞ。どこだ?」
ミスター・ピンク「隠してある。とりに行くんならさっさと行こうぜ。ここに居続けるなんて狂気の沙汰だ」
ミスター・ホワイト「この場所で落ち合う段取りだろ」
ミスター・ピンク「誰もこないじゃねえかよ! サツの犬がいるってわかった時点で段取りなんて無効だよ。ミスター・ブロンドやミスター・ブルーがどうなったのかもまったくわからねえ。ひょっとしたらもう死んでるか、逮捕されたか……。今ごろヤツら、警察署でしぼられてる可能性だってある。俺たちの名前は知らなくても、この場所はうたわされてるかも」
stash
I stashed ‘em. [I stashed them]
(俺がそれらを隠しておいたよ)
stash = 隠す
「隠す」というと「hide」という単語がよく知られていますが、「hide」の方が意味が広く、「隠す」以外にも自動詞「隠れる」の意味にも使われます。
一方、「stash」は少し具体的で、「こっそりしまう」という秘密めいたニュアンスがあるそうです。
本日の用例は盗んだダイヤモンドを隠したわけですから、ニュアンスをつかむにはわかりやすいですね。
We should have our heads examined
Because I think staying here, man, we should have our fuckin’ heads examined.
(ここに居続けるなんて狂気の沙汰だぜ)
この文章で注目したいのはこの熟語。
have one’s head examined = 頭がどうかしている
文字通りには「頭の検査をしなければいけない」
日本にも「いっぺん頭の医者に診てもらえ」なんて慣用表現がありますから、理解しやすいですね。
null and void と once と rat
I say the plan becomes null and void, once we found out we got a rat here.
(サツの犬がいるってわかった時点で段取りなんて無意味だ)
この1行に英語の勉強になる表現が3つもあります。
null and void
null and void = 無効の
これは「null(無効の、価値の無い)」と「void(無効の、中身のない、役に立たない)」という、同じような意味の形容詞を2つ繋げた表現ですね。
日本語にも「踏んだり蹴ったり」とか「破壊」(「破る」と「壊す」という似たような意味の漢字を2つ繋げたもの)など、同じような形式の言葉は多いので、こちらも理解しやすいと思います。
once
once = いったん〜すれば……、〜したらすぐに……
「once」はこのように、2つのセンテンスをつなげて、「〜したら最後、……せずにはいられなくなる」とか、「〜したらすぐに……する」とか「〜しようものなら、……だ」みたいな言い方に使えます。
映画『ジャンゴ 繋がれざる者』より
It’s like a pool of black tar. Once it catches your ass, you’re caught.
(そいつはコールタールのプールのようなものさ。からみついたら最後、抜けられなくなる)
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』より
Once you have returned to 1985, destroy the time machine.
(1985年に戻ったらすぐにタイムマシーンを破壊するんだ)
rat
rat = ネズミ、裏切り者、スパイ
日本語では警察が犯罪者のグループに忍び込むケース限定で、スパイのことを「犬」に例えますが、英語では「ネズミ(rat)」という単語を使うわけですね。
英語の「rat」はもう少し広義で使われ、「裏切り者」「密告者」「脱党者」などの意味にも使われるようです。
not … slightest idea
We ain’t got the slightest idea what happened to Mr. Blonde or Mr. Blue.
(ミスター・ブロンドやミスター・ブルーに何が起こったのかまったくわからない)
not have the slightest idea = まったくわからない
「not… the slightest」は、日本語では「これっぽっちも……ない」というニュアンスですね。
sweat someone down
The cops could have them right now at the station, sweating ‘em down.
(今ごろヤツら、警察署でしぼられてる可能性だってある)
sweat someone down = 〜を疲れさす
「sweat」は「汗をかく」「汗をかかせる」という意味。
つまり「sweat someone down」で、文字通りには「〜に汗をかかせる」という意味ですが、これで「疲れさす」という熟語になります。
これと同じような表現で、英語には
wear someone down = 〜を疲れさす
という熟語もあるようです。
(「wear」は「すり減らす」「消耗する」という意味)
They could be singing about this place
They could be singing about this place.
(あいつら、この場所をうたわされてるかも)
ここに「秘密をしゃべる」意味で「sing(歌う)」という動詞が使われていますね。
日本語でも警察で犯罪者が、仲間の秘密を「供述する」ことを警察用語で「うたう」という言い方をしますよね。
日本語で「供述する」を「うたう」と言うのは、「転(うつる、うたた、ころぶ)」の意味が語源だそうなのですが、語感として同じような「うたう」を英語も日本語も同じ意味で使っているのは実に面白いことだと思います。
まとめ
本日はタランティーノの映画『レザボア・ドッグス』のミスター・ピンクとミスター・ホワイトの会話で英語の勉強をしてみました。
けっこう日本語にそのまま置き換えても通じるような表現が英語にあって面白かったですね。