本日はロックミュージカルのカルト映画『ロッキー・ホラー・ショー』から、冒頭に流れるメインテーマ曲『Science Fiction, Double Feature(サイエンス・フィクション/2本立て)』の英語の歌詞を解説してみたいと思います。
この曲はあまり難しい英語の表現が出てこないかわりに、古いカルト映画関係の固有名詞がたくさん出てきますね。
なので本日の記事は、英語の解説よりも、固有名詞の解説がメインになりそうです。
YouTubeから映画の予告編なども貼っていきますので、本日の記事はどうか楽しみながらお読みください。
(B級映画は予告編見てるだけで楽しいですよね)
一部ネタバレがありますので、この歌詞に出てくる映画をこれから見ようと思っている方はご注意ください。
それではまず、英語の歌詞と私の和訳をどうぞ。
Science Fiction, Double Feature
サイエンス・フィクション/2本立てMichael Rennie was ill
The day the earth stood still
But he told us where we stand地球が静止した日
マイケル・レニーは傷つきながらも
ぼくらがどんな状況に立たされているのかを教えてくれたAnd Flash Gordon was there
In silver underwear
Claude Raines was the invisible manそしてあそこには銀色のパンツを履いた
フラッシュ・ゴードンがいて
クロード・レインズは透明人間だThen something went wrong
For Fay Wray and King Kong,
They got caught in a celluloid jamそれからフェイ・レイとキング・コングが
おかしなことになって
映画のフィルムに絡まっちゃったThen at a deadly pace
It came from outer space,
And this is how the message ranそれから、恐ろしい足どりで
それは宇宙からやってきた
そう、メッセージはこのようにして伝えられるんだScience Fiction, Double Feature
Dr. X will build a creature.
See androids fighting Brad and Janet.
Anne Francis stars in Forbidden Planet,
At the late night, double feature picture showSF映画の二本立て
ドクターXは怪物を創造し
ほら、ブラッドとジャネットがアンドロイドと闘うよ
アン・フランシス主演『禁断の惑星』
二本立てレイトショー上映だよI knew Leo G. Carroll was over a barrel
When Tarantula took to the hillsタランチュラが丘に現れたとき
レオ・G・キャロルは立ちすくむばかりだったAnd I really got hot
When I saw Janette Scott
Fight a Triffid that spits poison and kills猛毒を吐く肉食植物と戦う
ジャネット・スコットを見たとき
ぼくは本当に興奮したものさDana Andrews said prunes
Gave him the runes
And passing them used lots of skillsお人よしに渡されたルーン文字の紙を
他の人に渡すのはちょっとやっかいだったと
ダナ・アンドリュースは語ったBut “When worlds collide”
Said George Pal to his bride
“I’m going to give you some terrible thrills”
Like aしかし『地球最後の日』で
ジョージ・パルが花嫁に言ったことには
「そら恐ろしいスリルをきみにあげるよ」
それは・・・Science Fiction, Double Feature
Dr. X will build a creature
See androids fighting Brad and Janet
Anne Francis stars in Forbidden Planet
At the late night, double feature picture showSF映画の二本立て
ドクターXは怪物を創造し
ほら、ブラッドとジャネットがアンドロイドと闘うよ
アン・フランシス主演『禁断の惑星』
二本立てレイトショー上映だよI want to go
To the late night double feature picture show
By RKO
To the late night, double feature picture show
In the back row
To the late night double feature picture show行きたいな
二本立てレイトショー
RKO制作
二本立てレイトショー
後ろの席で
二本立てレイトショー
Science Fiction, Double Feature
まずはタイトルについて。
日本語にもなっている「SF」という言葉はここに出てくる Science Fiction の頭文字をとってものですね。
文字通りに訳すと「空想科学小説」ということになります。
Double Feature = 二本立ての
この Feature という単語に関しては以前に以下の記事で解説しました。
ここでの Feature は「特集」「目玉(呼び物)」といった意味になります。
まとめると、Science Fiction, Double Feature で、「SF映画の二本立て上映」と訳すのが妥当ですね。
オフィシャルの邦題は『サイエンス・フィクション/2本立て』と、前半がカタカナになっています。
Michael Rennie と The day the earth stood still
Michael Rennie was ill
The day the earth stood still
But he told us where we stand地球が静止した日
マイケル・レニーは傷つきながらも
ぼくらがどんな状況に立たされているのかを教えてくれた
Michael Rennie(マイケル・レニー)はイギリスの俳優。
そして『The day the earth stood still(邦題:地球の静止する日)』は彼の代表作のタイトル。
『地球の静止する日』でマイケル・レニーが演ずるクラトゥは、地球にやってきた宇宙人。
「地球は今現在、危機的状況にある。早く核開発をやめないと、それを危険視する他の星から攻撃される」と忠告しますが、地球の人たちには受け入れられず、軍に拘束され重傷を負ってしまいます。
この歌詞はそんな映画の内容を言っている3行だと言えますね。
Flash Gordon was there in silver underwear
And Flash Gordon was there
In silver underwearそしてあそこには銀色のパンツを履いた
フラッシュ・ゴードンが
『Flash Gordon(フラッシュ・ゴードン)』はアメコミのヒーローもの。
1936年に映画化され、人気シリーズとなりました。
1980年にも再度映画化されています。
『Flash Gordon(フラッシュ・ゴードン、1936年制作)』の予告編はこちら
Claude Raines was the invisible man
Claude Raines was the invisible man
(クロード・レインズは透明人間)
Claude Raines(クロード・レインズ)はイギリス出身の俳優。
H・G・ウェルズ原作の『The Invisible Man(透明人間)』というアメリカ映画でデビューしました。
他にも『ロビンフッドの冒険(1938年)』や『狼男(1941年)』『カサブランカ(1942年)』などの有名な映画に出演しています。
Then something went wrong …
Then something went wrong
For Fay Wray and King Kong,
They got caught in a celluloid jamそれからフェイ・レイとキング・コングが
おかしなことになって
映画のフィルムに絡まっちゃった
Fay Wray と King Kong
Fay Wray(フェイ・レイ)はカナダ出身の女優さん。
1933年制作のアメリカ映画『King Kong(キング・コング)』のヒロインとして有名。
スクリーム・クイーンの元祖として映画史に名を残す女優さんです。
They got caught in a celluloid jam
celluloid とは「セルロイド」、いわゆる映画のフィルムのことを指します。
jam は「狭いところに無理に押し込む」「詰め込む」「ふさぐ」「つかえる」などの意味。
They got caught in a celluloid jam.
とは、つまり、「映画のフィルムが絡まってそれに巻き込まれてしまった」という意味になりますね。
ここの3行では、最初に something went wrong(おかしなことになった)と言っておいて、映画のストーリーの中で起きる事件のことを言っているのかな、と思わせておいて、They got caught in a celluloid jam(映画のフィルムに絡まっちゃった)とオチがつきます。
ここはちょっとおもしろいところですね。
It came from outer space
Then at a deadly pace
It came from outer space,
And this is how the message ranそれから、恐ろしい足どりで
それは宇宙からやってきた
そう、メッセージはこのようにして伝えられるんだ
『It came from outer space(それは外宇宙からやって来た)』は、レイ・ブラッドベリ原作で1953年制作のアメリカ映画(日本未公開)。
Dr. X will build a creature …
Dr. X will build a creature.
See androids fighting Brad and Janet.ドクターXは怪物を創造し
ほら、ブラッドとジャネットがアンドロイドと闘うよ
『Dr. X(ドクターX)』は1932年アメリカ制作の怪奇サスペンス映画。
先に登場した元祖スクリーム・クイーン、フェイ・レイがヒロインとして出演しています。
ここの部分は、『ロッキー・ホラー・ショー』本編で後にフランクン・フルターが人造人間ロッキーを創造するモチーフにもひっかけていると思われます。
すぐ後の行に、映画本編の登場人物であるブラッド(Brad)とジャネット(Janet)の名前があるところからもわかる通り、このサビの部分に『ロッキー・ホラー・ショー』本編の内容が侵食してきている感じが受け取れますね。
Anne Francis stars in Forbidden Planet
Anne Francis stars in Forbidden Planet
(アン・フランシス主演『禁断の惑星』)
アン・フランシスはアメリカの女優。
『禁断の惑星』は1956年アメリカ制作のSF映画のクラシック。
『2001年宇宙の旅』前史のSF映画といえばこの作品。
ある意味、近代的なSF映画を誕生させたと言っても過言ではない名作です。
I knew Leo G. Carroll was over a barrel …
I knew Leo G. Carroll was over a barrel
When Tarantula took to the hillsタランチュラが丘に現れたとき
レオ・G・キャロルは立ちすくむばかりだった
Leo G. Carroll
Leo G. Carroll(レオ・G・キャロル)はイギリスの俳優。
この人はヒッチコック映画の常連として知られています。
ヒッチコック映画の常連俳優というとジェームズ・スチュアートやケーリー・グラントを思い浮かべる人が多いですが、主役にこだわらなければ、なにげに一番回数多くヒッチコック映画に出演しているのはこの俳優さんらしいです。
over a barrel
over a barrel とは、「言いなりになっている」「窮地に陥っている」などを意味する英熟語。
barrel とは、文字通りには「銃身」の意味ですが、いわゆる「銃」の意味で使われます。
over a barrel で、文字通りには「銃の向こう」という意味。
つまり“銃を突きつけられている状態”ということですね。
Tarantula
『Tarantula(世紀の怪物/タランチュラの襲撃)』は1955年制作のアメリカ映画。
巨大化したタランチュラが街を襲うという典型的な巨大生物パニックもの。
レオ・G・キャロル主演。
Triffid と Janette Scott
And I really got hot
When I saw Janette Scott
Fight a Triffid that spits poison and kills猛毒を吐く肉食植物と戦う
ジャネット・スコットを見たとき
ぼくは本当に興奮したものさ
Janette Scott(ジャネット・スコット)はイギリスの女優さん。
そして Triffid(トリフィド)とは、ジョン・ウィンダムの『トリフィド時代』を原作にした1962年イギリス制作のSFホラー映画『人類SOS!(The Day of the Triffids)』に出てくる肉食植物の名前です。
ジャネット・スコットがヒロインとして出演しています。
Dana Andrews said prunes …
Dana Andrews said prunes
Gave him the runes
And passing them used lots of skillsお人よしに渡されたルーン文字の紙を
他の人に渡すのはちょっとやっかいだったと
ダナ・アンドリュースは語った
この3行は1957年イギリス制作のホラー映画『Night Of The Demon(悪魔の呪い)』の内容からきています。
ルーン文字で書かれた紙を渡された人が悪魔に殺される、というお話しで、ダナ・アンドリュース(Dana Andrews)演じる主人公が渡されたルーン文字の紙を他の人に渡すことで命拾いをする、というくだりに寄っています。
ちなみに prune とは、果物の「プルーン」のことですが、スラングで「まぬけ」とか「バカ」という意味があるそう。
When worlds collide と George Pal
But “When worlds collide”
Said George Pal to his bride
“I’m going to give you some terrible thrills”しかし『地球最後の日』で
ジョージ・パルが花嫁に言った
「そら恐ろしいスリルをきみにあげるよ」
『When worlds collide(地球最後の日)』は1951年制作のアメリカ映画。
George Pal(ジョージ・パル)はそのプロデューサー。
By RKO
RKO(Radio Keith Orpheum Entertainment)はかつてアメリカに存在したメジャー映画会社。
MGM、パラマウント、20世紀フォックス、ワーナーと並んでビッグ5と言われていましたが、1957年に倒産してしまいました。
In the back row
In the back row とは、映画館の一番後ろの席のこと。
レイトショーは夜のデート・コースの定番で、後ろの席でよくカップルがイチャイチャしていたんだそうです。
この一節はその風潮について言及しているんですね。
ちなみに『ロッキー・ホラー・ショー』は仮装して映画館に見にいき、見ている最中に映画の画面に向かって米を投げたり、セリフに合わせて掛け声をかけたりする、独特の“鑑賞方法”が知られていますよね。
私も30年前アメリカに住んでいたときよく行ってました。
このときに、初参加の人は「Virgin(バージン)」と呼ばれ、後ろの席に座るルールになっています(私は何度行っても相変わらず後ろの方の席に座ってましたが)。
この伝統はこの曲の歌詞のこの部分からもたらされた慣習なんだそうで。
あとがき
本日から何回かにわけて、映画『ロッキー・ホラー・ショー』に出てくるセリフや歌を教材に、英語の勉強をしていきたいと思います。
尚、本日の記事を書く際には wikipedia の他、以下のページを参考にさせていただきました。
それでは最後に、1973年ロンドン公演での『Science Fiction, Double Feature(サイエンス・フィクション/2本立て)』の音源でお別れしたいと思います。
歌っているのはマジェンダを演じたパトリシア・クイン。
実は私、この曲は映画本編よりこちらのバージョンの方が好きで、iPhoneに入れて普段から聴いているのはもっぱらこっちです。