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マリアとクルトとのやりとりから英語の勉強【サウンド・オブ・ミュージック】

いやはや、人には向き不向きってのがやっぱりあるものなんですね。

あまりの素行不良で修道院を追い出され、トラップ家にやってきたマリアさんですが、またたくまに子供たちの心をわしづかみにし、家庭教師、というより、子守の才能をみせつけます。(家庭教師としてはやはりちょっと異端でしょうか)

新入り家庭教師への洗礼も、カエルをポケットに入れられたくらい。いわゆる軽いジャブ程度で済み、初対面ですでに末っ子を手なずけ、トラップ大佐から一本とって子供たちの笑いを誘い、夕食では子供たちに反省の涙を流させ、「わたしには家庭教師はいりません」と一番手ごわそうなことを言っていた長女も恋人との逢瀬をかばうことで夜にはもう心を通わせてしまいます。

結局その夜には雷を怖がる子供たちがこぞってマリアの部屋に集まり、みんなで楽しく大合唱。

院長が「The Lord will show you in His own good time(神のお導きで、その時がきたらわかりますよ)」と言っていた「苦難(difficulty)」はもっと後に訪れることになるんですが、とりあえずこの段階では順調なすべり出し、といった感じです。

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“incorrigible” な!? 字幕と原文との微妙なニュアンスの違い

そんなマリアのあざやかなお手並みのひとつが、次男クルトとのやりとり。

Kurt: I’m Kurt. I’m 11. I’m incorrigible.
Maria: Congratulations.
Kurt: What’s “incorrigible”?
Maria: I think it means you want to be treated like a boy.

クルト「僕はクルト。11歳。僕は“手に負えない”んだよ」
マリア「それはよかったわね」
クルト「“手に負えない”ってどういう意味?」
マリア「自分はもう一人前だぞ、って認めてもらいたいのね、あなたは」

このやりとり、DVDの日本語字幕ではクルトが自分のことを“incorrigible(手に負えない)”と言ったのに、マリアは「Congratulations(それはよかったわね)」と肯定したので、クルトは「どうして“手に負えない”がいいことなの?」と質問する、みたいなニュアンスになっていますけど、私はクルトは本当に“incorrigible”の意味がわからなくて聞いたんだと思います。

きっと以前の家庭教師に「あなたはもう本当に手に負えないわね!」とかなんとか言われて、そのときに聞いた言葉をそのまま自己紹介に使っているんでしょうね。
子供心に「インコリジブル(incorrigible)」という言葉の響きがカッコいいと思ったのかもしれません。
悪い意味の言葉だということくらいはわかっていたはずですから、それをマリアに肯定されて、どんな意味なのか気になったのだと私は解釈しています。

じっくり映画を原文で理解していくと、こういった字幕の微妙なニュアンスのズレがわかって、より深く映画がわかってきますね。

クルトの質問に対し、マリアは「手に負えない、って意味よ」とストレートに答えず、「あなたは一人前の男の子として扱ってもらいたいのね」と男の子の気持ちを理解しているところを見せてクルトを満足させます。

ちなみに上記で出てきた boy という単語ですが、これは child に対する boy ということだと思うので、「少年」ではなく「一人前」と訳しました。

incorrigible という言葉は、「correct できない」という意味です。

correct = 正す、矯正する、修正する

-ble が語尾の言葉は「〜できる」という意味の形容詞。

なので、

corrigible = 矯正できる(しやすい)

in- が冒頭の言葉は「〜じゃない」ということですから

incorrigible = 矯正できない、修正できない

つまりは「手に負えない」ともなるわけですね。

頭の外に置き忘れてきた leave out

さてその夜、マリアが寝る前に神様に子供たちの名前をひとつひとつあげてお祈りをするのですが、その中でひとりだけ頭から名前がすっぽり抜け落ちている子がいる。それがこのクルトなんですね。
その直後の子供たちとの会話で思い出して、

Kurt! That’s the one I left out!
(クルト! そうだ忘れてた)

とマリアが言います。

left out は leave out の過去形ですが、この leave out という表現、「除外する」「忘れる」「仲間ハズレにする」という意味の熟語です。

leave は「(何かをそこに残して)去る」という意味の動詞。
out は「外に」という意味の副詞。
この熟語での場合は「どこか頭の外に置き忘れてきてしまった」というニュアンスですね。

おわりの本題に関係ない雑談

最後は余談ですが、この7人兄弟のなかで、私のお気に入りは三女ブリギッタ。
キャラも一番立っているし、歌い方もおもしろいし、女優さんとしてもオーラがありますね。

このブリギッタの役をやっているアンジェラ・カートライトという女優さん、最近知ったんですが、かのヒッチコックの『鳥』という映画で女の子の役をやったヴェロニカ・カートライトの妹さんなんですね。

お姉さんのヴェニカさんの方は、『イーストウィックの魔女たち』とかTVシリーズ『Xファイル』などで、現在もおなじみの女優さんですが、妹さんのほうはこの『サウンド・オブ・ミュージック』以外はあまり代表作がなくて残念です。

アンジェラ・カートライト


ヴェロニカ・カートライト

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