「ありえない」を英語で?【サウンド・オブ・ミュージック】

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wikipedia の『サウンド・オブ・ミュージック』のページを見ていたら、こんな記述が目に止まりました。

エルザは、役名がBaronessとなっており『男爵夫人』とも訳されて表現されているが(中略)、先立たれた未亡人かどうかは映画の中では明らかでない。

これはおかしいですね。実際には映画の中で、マックスおじさんがエルザにこんなセリフを言うところがあります。

And when your husband died, he left you with a terrible fortune.
(そして、きみの旦那さんが死んで、きみには莫大な財産が残された)

爵位は亡き夫のものなのか、女男爵なのかは確かに映画の中ではわかりませんが、夫に先立たれた未亡人なのは確かなようです。
私は wikipedia のIDを持ってないので出来ませんが、誰か直しておいてあげた方がいいんじゃないでしょうか。

さて本日はそんなエルザがゲオルグと、伴侶を失った者どうし、共感を感じ、映画の前半で愛を育んでいる、そのシーンの会話から、英語の勉強をしてみたいと思います。




英語のセリフの引用と和訳

まずは英語の会話と和訳を掲載します。

Elsa: This really is exciting for me, Georg. Being here with you.
Georg: Trees, lakes, you’ve seen them before.
Elsa: That is not what I mean, and you know it.
Georg: Ah, you mean me? I’m exciting?
Elsa: Is that so impossible?
Georg: No, just highly improbable.

エルザ「本当にわくわくするわ、ゲオルク。あなたとここにいることが」
ゲオルク「木々、湖、どれも初めて見るわけじゃないだろう」
エルザ「そんなこと言ってないわよ。わかってるくせに」
ゲオルク「ああ、僕のことか。僕がわくわくさせるってかい?」
エルザ「そんなにありえないことかしら?」
ゲオルク「いいや。でも、かなりありそうもないね」

and you know it = 知ってるくせに

2言目に and you know it というセンテンスがありますね。

これは何かを言った後、「知ってるくせに」と付け加えるときによく聴く言い回しですね。

覚えておくと英会話に使えそうです。

balancing rock

「ありえない」を英語で? impossible と improbable の違い

最後の方に impossible と improbable という言葉が出てきます。
この2つ、両方とも「ありえない」という意味の形容詞です。
ではこの2つはどう違うのか、ネットでもあちこちで話題になっているようなので、このシーンをきっかけに皆様もマスターしてしまいましょう。

impossible = 不可能
improbable = 不可能ではないが、まずありえない

つまり impossible は可能性が0%だけど、improbable は0.1%か0.01%くらいはありうる、でもまずほとんどまずありえない、という意味です。

具体例をあげると

impossible = 体育の成績がクラスでビリの小学生が、一生懸命に練習して、明日オリンピックに出場して金メダルを獲得するようなこと

improbable = バナナの皮が千枚くらい落ちている氷の上を100メートル転ばずに歩いて通り過ぎた後でスパイクに履き替えて道を歩いていたら何もつまづくものがない場所で転んで、倒れたところに目の前に10万円の札束が落ちていて、それがたまたまバイト先の店長が落とした自分の今月のバイト代だった、ようなこと。

まあ、後者は可能性はゼロじゃないけど、まずありえない感じですよね。

日本語でも「そんなの不可能だよ!」という物言いに対して「いや、可能性はゼロじゃないよ」なんて会話のやりとりをよく聞きますが、そんなありがちなツッコミの機先を制するためにこういった言語表現が発達したんじゃないかと私は分析していますが、いかがなものでしょう。

まあそういうことで、つまりこの会話では、ゲオルクが自分を卑下し、「自分がきみをわくわくさせるなんて、不可能じゃないけど、ほとんど不可能に近いね」と言っているわけですね。

この not impossible, but highly improbable(不可能じゃ無いけど、まずありえない)という言い回し、あちこちでよく聞くので、英会話でけっこう使える表現です。

また、improbable はこの用例のように、highly を伴って highly improbable の形で使われるのが定番のようです。

ダリ

あとがき

ここのゲオルグのセリフ、この時点ではただ自分を卑下しているだけですけど、この先の展開を思い出すと、まんざら嘘というわけでもないんですよね。
図らずも未来の自分たちを暗示してしまったのか、それとも、このときの深層心理が表れたのか、知るよしもありませんが、どうなんでしょうね。