Climb every mountain(すべての山に登れ)
夕陽に照らされた院長の横顔が印象的なこの名曲。
私の人生では、初心を忘れるたびにふとまた出会って、大切な何かを思い出させてくれる、そんな歌です。
本日はこの歌詞を訳してみました。
Climb every mountain
Search high and low
Follow every byway
Every path you knowすべての山に登りなさい
高き低きもくまなく探し求め
知ってるすべての横道も
すべての小道も辿ってClimb every mountain
Ford every stream
Follow every rainbow
Till you find your dreamすべての山に登りなさい
すべての川を渡って
すべての虹を追いかけて
あなたの夢をつかむまでA dream that will need
All the love you can give
Every day of your life
For as long as you live夢を手にするために
あなたの愛をすべて与えなさい
あなたの人生一日一日を
生きてる限りずっと
やさしくあたたかな言葉のなかにも、キリッと身が引き締まる心意気を与えてくれる素晴らしい歌詞ですね。
high and low は熟語なんですと
この歌詞で気になった部分がこちら。
Search high and low
ここの部分は「高いところも低いところも探して」だとずっと思っていたのですが、辞書で調べてみたところ、実は
high and low = くまなく
という熟語なんだそうです。
日本語で近い言葉を探すと「あっちもこっちも」とか「そこかしこ」などが当てはまるんじゃないでしょうか。
他の映画で用例を探してみたところ、
映画『ヘアー』より
I’m hairy, high and low.
(俺はどこもかしこも毛だらけさ)
映画『プライベートライアン』より
High and low at the corners. It’s gonna be tight. Be prepared for close contact!
(角にくまなく配備。困難を極めるが、近接戦に備えろ!)
などがありました。
ただこの歌の歌詞の場合は前の行の「山に登る」にかかっているので、「高いところも低いところもくまなく」とダブって訳してみました。
stream と river と brook の違い
次に気になったのがこちらの一行。
Ford every stream
(すべての川を渡って)
ford は「川を歩いて渡る」という意味の動詞です。
これが名詞になると、「(車や徒歩で歩いて渡れるくらいの)浅瀬」を意味するそうです。
Ford と聞くと車の会社を即座に思い出しますね。
何を隠そう、私がアメリカに住んでいたときに運転していた車が Ford でした。
自動車会社の Ford は単に創業者の名前がフォードさんだからなのですが、そもそもフォード(Ford)という苗字はこの ford という単語からきたそうなので、きっと浅瀬のある地域で発生した苗字なのかもしれません。
そのあとの stream ですが、これは「川」の意味だけでなく、水や液体などの「流れ」全般を指すことのできる単語です。
そういえば『サウンド・オブ・ミュージック』の最初の表題曲にこんな一節がありましたね。
To laugh like a brook
(小川のように笑う)
どうも「川」というと私はバカのひとつおぼえみたいに river ばかり使いがちでしたが、英語では川の大きさによっていろいろ言葉があるんですね。
使い分けとしては、river はあるていど大きな川を指す言葉で、山腹にさらさら流れる小川のようなものは brook。
あと creek(小川)という言葉もありますが、これは river と brook の中間くらいの大きさの川を意味します。
brook → creek → river
の順にだんだん高地から低地へ、支流から本流へと転じてゆく感じですね。
stream それら全般を含めた「流れ」という概念を指します。
この「Climb every mountain」の歌詞の場合は、「目の前に立ちはだかる川は、大きいのも小さいのもぜんぶ渡って、夢に向かってずんずん進め」というような曲ですから、より意味の広い stream を使っているのかもしれません。
ただ、その2行後の dream と韻を踏んでいるというのが、よりメインの理由でしょう。
この曲における every の本当の意味
ちなみにこの曲にたくさん出てくる every という言葉。
翻訳には単純に「すべて」と訳しましたが、これはちょっと説明が必要ですね。
「Climb every mountain(すべての山を登って)」と聞くと、「あちこちにある山という山、すべて征服しろ」という意味にもとれてしまいますよね。
しかしここはそういうニュアンスよりむしろ、夢に向かってずんずん前に進んでいく途中、山に出会ったら、その都度、逃げないで、必ず登って乗り越えましょう、というニュアンスなんですね。
つまりここでの every の意味は「その都度」ということです。
この歌に出てくる山や川や横道や小道や虹は、夢に向かって進む途中に立ちはだかる様々な困難や選択肢、チャンスの数々を、ひとつひとつ、その都度ものにしていく、ということを言っているんですね。
まとめ
映画で英語の勉強をしていると、たまにハードルの高い、理解するのが難しいセリフに出会うこともしばしばですが、諦めず調べてゆくうちに、だんだん英語に対する理解が深まってきて、ひとつの山を越えて新たな景色が見えてくる、そんな感覚をおぼえます。
これって、なんとなくこの歌の歌詞に似ていますね。
そんなわけで、本日もこの記事を書いていて、熱い初心を思い出した私でした。